研究概要 |
アポトーシス細胞表層へのホスファチジルセリンの露出機構の解析 多くのアポトーシス細胞では膜リン脂質のひとつであるホスファチジルセリン(PS)が,細胞膜内側層から外側層へ移行して,食細胞に認識される目印分子として働く。このアポトーシス細胞におけるPS露出の機構を解明するために,細胞膜中でのPSの移動を規定する酵素を新たにクローニングあるいは他の研究者より供与してもらい解析を進めた。しかし,研究開始後にこれらのタンパク質がPS移動酵素の本体ではないことが判明した。そのため,あらためて真の酵素を同定するには時間がかかりすぎると考え,この課題の展開を断念した。 新規貧食目印分子PH2抗原の性状及びアポトーシス細胞表層への移動機構の解析 アポトーシス細胞全体を免疫原として作成されたモノクローナル抗体群をスクリーニングすることにより,マクロファージによるアポトーシス細胞の貧食反応を阻害するクローンPH2を同定した。PH2が認職する抗原は新規貧食目印分子と予想されるため,その性質と細胞内局在性を調べた。その結果,PH2抗原はタンパク質であり,正常細胞内の膜構造部分に存在することがわかった。さらに解析を進め,PH2抗原の少なくとも一部がトランスゴルジに局在することが判明した。よって,アポトーシス誘導時に,「トランスゴルジ→エンドソーム→細胞膜」という小胞輸送を経て,PH2抗原が細胞表層に露出して貧食目印となることが示唆された。 アポトーシス細胞表層へのリボソームタンパク質の移動の解析 アポトーシス細胞におけるリボソームの構造変化を調べた。その結果,アポトーシスの後期段階に,調べた28種類のヒトリボソームタンパク質のうち3種類が分解してリボソームから離脱することがわかった。さらに,6種類のリボソームタンパク質がアポトーシス時に細胞表層に検出されるようになることが見いだされた。よって,アポトーシス細胞において,リボソームタンパク質がリボソームを離れて細胞表層に移動し,貧食目印として働く可能性が初めて示唆された。
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