(1)酵母チロシンtRNAを大腸菌生体外タンパク質合成系で使おうとすると、大腸菌リシル-tRNA合成酵素により僅かにミスアシル化を受けることが判明したので、このミスアシル化を防止を最優先に研究することにした。 (2)5'-末端側にextra配列を持つ酵母チロシンtRNA遺伝子DNA(野生型・変異型)を合成し、変異導入のための適当なプライマーセットと共にPCRして変異チロシンtRNA前駆体の遺伝子DNAを作成した。これを鋳型としてT7RNAポリメラーゼで転写して変異チロシンtRNA前駆体を作製した。上記の目的を考慮してアンチコドンステム内の3つのA-U対をG-C対に改変したものやアクセプターステム内の数ヵ所に変異を入れたtRNAを作成した。これらの変異チロシンtRNAにつき酵母チロシル-tRNA合成酵素によるチロシン受容能と大腸菌リシル-tRNA合成酵素によるリシンの誤受容能を測定した。 (3)その結果、アンチコドンステム内の3つのA-U対をG-C対に改変した変異体はチロシン受容能を保持したまま劇的にリシンの誤受容が減少していること、すなわちこれらの変異は大腸菌リシル-tRNA合成酵素に対する負のアイデンティティー要素であり得ることが判明した。 (4)酵母チロシル-tRNA合成酵素のアミノ酸基質特異性を改変することに成功した。 (5)酵母チロシンtRNAのアンチコドンとmRNAのコドンにWatson-Crick塩基対以外の新規塩基対を導入し、新しい塩基対合ルールを開拓することを試みた。
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