研究概要 |
ホスホフルクトキナーゼは解糖系のキーエンザイムであり、フルクトース2,6二燐酸(F26P)依存的に解糖系全体を調節している。細胞内のF26P量は、F26P合成分解酵素によって制御されている。このF26P合成分解酵素には肝臓型、心臓型、精巣型、脳型の4つのアイソザイムの遺伝子が存在する。そのうえに選択的スプライシングによって、ひとつの遺伝子から異なるアイソフォーム蛋白質をコードするmRNAが生じている。このためにF26P合成分解酵素は、肝臓型遺伝子では2種(RL2K, RM2K)、心臓型遺伝子では4種(RH2K1〜4)、精巣型遺伝子では1種(RT2K)、脳型遺伝子では8種(RB2K1〜8)のアイソフォーム蛋白質がコード可能であり、タンパクの分子種として多様性を示す。 これらのアイソフォームの発現には、遺伝子の転写レベルと選択的スプライシングのレベルに組織特異性がある。骨格筋においては、RM2K, RH2K1,RH2K4,RB2K2,RB2K3,RB2K5,RB2K6,RB2K7,RB2K8をコードするmRNAが存在することをRT-PCR又はRNase Protection assayによって確認した。さらにタンパクレベルでの発現を明らかにする目的で、これらのアイソフォームを互いに区別して検出するために抗ペプチド抗体を作成し、ウェスタンブロッティングを行った。その結果,骨格筋内にmRNAが存在するにも関わらず、脳型遺伝子と心臓型遺伝子由来のすべての蛋白質分子としてのアイソフォームは存在しなかった。このことは、これらの遺伝子は転写とプロセッシングを受けてmRNAになるにもかかわらず、翻訳調節又は翻訳後の調節過程において蛋白質として骨格筋には蓄積しないことを示している。
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