1.コレステローノ結合プローブ(BCθ)の調整と低子プローブの開発:コレステロールに特異的に結合する毒素蛋白質(perfringolysin O)を改変し、細胞毒性のないコレステロール結合蛋白質(BCθ)を作製した。さらに、毒素のC末端ドメイン(D4)を大腸菌で発現させ精製した。D4に蛍光色素を導入し細胞を染色したところ、コレステロール特異的な結合が確認され、蛍光標識したD4はリアルタイムのコレステロール可視化解析に有用と考えられた。 2.コレステロール結合プローブ(BCθ)によるラフトの検出と共存分子の検索:本プローブの血小板や培養細胞等への結合特性を調べ、以下のことを明らかにした。(1)本プローブは膜のコレステロール密度の高い領域に選択的に結合する。(2)プローブと結合した細胞膜コレステロールの界面活性剤に対する溶解性はラフトの特徴と合致していた。(3)プローブを結合させた血小板を破砕し蔗糖密度勾配遠心で分画したところ、大部分のプローブがSrc family kinase類やコレステロールに富む低密度膜画分に回収され、ラフトへの選択的結合が強く示唆された。以上の結果から、本プローブがラフトを検出するマーカーとなりうることが示された。このプローブが認識する膜ドメインと挙動をともにする情報伝達分子を検索し、その候補分子としてc-Srcが検出された。さらに、従来法により調製した「ラフト」膜小胞へのこのプローブの結合を電子顕微鏡を用いて調べたところ、一部のポピュレーションの膜小胞にのみ結合した。このことから、従来法で調製したラフトは不純物を多く含んでおり、ラフトの解析のためにはさらに精製を進めて、コレステロールに富む膜小胞を単離する必要のあることが示唆された。
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