研究概要 |
RhoファミリーはRho, Rac, Cdc42などからなり、がん遺伝子産物Rasと類似の蛋白質群である。これらの蛋白質は他の蛋白質とも協調しながら細胞の運動・接着の制御、分裂などの多彩な細胞現象を制御しており、Rho依存的シグナル経路の解明は種々の細胞現象の分子基盤の解明に必須と考えられる。神経細胞でのRho活性化の分子機序は従来不明であった。そこで、神経細胞でRhoが如何にして活性調節されているかの一端を解明した。私たちは世界に先駆けて、特定の細胞内蛋白質のリン酸化状態をin Vitroおよびin vivoでモニターすることが可能な抗リン酸化ペプチド抗体の作製法を開発していたが、その技術を応用してKIAA380がRho特異的活性化因子であることを同定した。さらに、神経系培養細胞におけるリゾフォスファチジン酸依存性神経突起退縮では、KIAA380によるRhoの活性化が駆動力になっていることを明らかにした。また、ドメイン解析によりKIAA380のDH/PH領域のC末側近傍に存在するプロリン・リッチ領域がKIAA380依存性形態変化に重要な役割を果たすことを見出した。私たちはさらに本研究を発展させている。 すなわち、がん細胞の増殖と転移、血管新生との関連が報告されている細胞膜受容体PlexinとKIAA380が相互作用することと、Plexin受容体刺激により細胞内のRhoが活性化されることを見出している。また、この場合のRho活性化にはRacの活性も必要であることを見出している。
|