研究概要 |
1.Rho-Rho kinase系の未分化間葉系細胞の骨芽細胞への分化に及ぼす作用 平成12,13年度の研究結果から、ROCK阻害薬が宿主の骨代謝に殆ど影響することなく、BMP-2により誘導される異所性骨形成を亢進することが明らかとなった。培養細胞を用いた実験から、ROCKが、骨芽細胞のBMP-4発現、骨形成を負に制御することが明らかとなり、ROCK阻害薬はその抑制を解除することにより骨形成を促進することが示唆された(発表論文3)。さらに、骨形成に関する他の細胞内シグナルを解析したところ、MEK-MAP kinase系も骨芽細胞を負に制御していることが、特異的なMEK1阻害薬(PD98059,U0126)が骨形成促進作用を有すること、MEK1のcDNAのC2C12細胞への発現実験などから明らかとなった(発表論文6)。さらに臨床応用に向けて、阻害薬の投与方法などを検討したい。 2.Rho-Rho kinase系のケモカイン刺激リンパ球遊走に関する作用 スペインのマドリード大学の免疫グループとの共同研究で、Rho-Rho kinase系が、腫瘍細胞のみならず、ケモカイン(SDF-1alpha)によりCXCR4レセプターを介して誘導されるリンパ球の遊走運動に、細胞骨格蛋白アクトミオシン系及び微小管のダイナミクスを制御することで関与している事が明らかとなった(発表論文5)。免疫や炎症における細胞運動にもRho-Rho kinase系が重要な役割をすることが明らかとなり、臨床応用が期待される。 3.Rho-Rho kinase系のlysosome細胞内輸送に関する作用 九州大学院薬学研究科の西村助教授との共同研究で、Rho-Rho kinase系が微小管重合調節を介して、lysosome等の細胞内輸送を制御していることを初めて明らかにした。(発表論文1,7)。細胞内のtrafickingの制御に関しては、現在非常に注目されており、薬剤による調節等分子標的治療をめざした研究の発展が期待される。
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