研究概要 |
ニワトリリゾチームのグアニジン変性に対する圧力の効果(100MPa以下)をいろいろな温度で紫外吸収スペクトルを用いて調べた。常圧ではこのタンパクは二状態変性し安定な中間状態をとらない。二状態変性を仮定して変性の自由エネルギー変化のグアニジン濃度依存性を求めた。以外にも加圧下、低温域(15℃以下)では二状態モデルでは得られたデータを説明できなかった。現象論的には加圧下では系の体積が減少する方向に平衡がshiftして変性の協同性が減少したものと解釈される。ニワトリリゾチームの変性中間体は不安定で常圧下では動力学にのみ観測されるものであるが加圧下低温域でこの中間体であるmolten globule状態が安定になるものと考えられる。 一方、イヌミルクリゾチームは安定なmolten globule状態をとることが知られているが,このリゾチームの熱的性質の研究によって熱変性においても天然状態からmolten globule状態への構造転移とmolten globule状態から無秩序状態への構造転移が明瞭に分離している極端な三状態変性をとることが分った。またこれの原因が中間状態のmolten globule状態の安定性が他のタンパク質の中間状態よりも極端に安定なことによるものであった。この極端な安定性はHis21, Ile56, Ala93, Val109による主に疎水クラスター形成によるものであることが変異体の実験から明らかとなった。この試料を用いて圧力効果によって体積物性に関する情報を得る実験が可能になった。
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