研究概要 |
細胞外刺激により産生されるセカンドメッセンジャーであるイノシトール3リン酸(inositol 1,4,5-trisphosphate : IP_3)は、細胞内Ca^<2+>ストア上のIP_3受容体(IP_3R)に結合して開口させることにより細胞質中にCa^<2+>を放出させる。本研究では、ニワトリB細胞由来のDT40細胞の内在する3種類すべてのIP_3R遺伝子をノックアウトしたR23-11細胞を用いることで、変異を加えたIP_3Rのチャネル活性の測定が可能となる実験系の構築を試みた。マウスタイプ1IP_3RのcDNAをR23-11細胞に導入し、140株以上の細胞をスクリーニングすることによりさまざまな発現量を持つ11種類の安定変異株(KMN細胞)を樹立した。蛍光免疫組織、および免疫電子顕微鏡観察により、外来性に発現したIP_3RはR23-11細胞の小胞体上に局在していることが明らかとなった。R23-11細胞は細胞膜上にB細胞抗原レセプター(BCR)を持ち、BCRの活性化により細胞内のIP_3産生が起き、小胞体からCa^<2+>放出が引き起こされる。マウスタイプ1 IP3Rを発現させたKMN細胞株に抗BCR抗体を添加したところ、DT40と同様に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が観察され、外来性に導入したIP_3Rが正常に機能していることが確認された。また、KMN細胞の膜画分を調節し、人工脂質二重膜に再構成したところ、これまでに観察されているタイプ1 IP_3Rと同様の単一チャネルコンダクタンス、IP_3依存性、およびCa^<2+>依存性を示す単一チャネル電流が観察され、R23-11細胞を用いることで変異IP_3Rの単一チャネルレベルでの解析が可能となることが示された。
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