研究概要 |
ヒドロゲナーゼの活性阻害剤・CO分子結合型の超高分解能X線結晶解析に成功した.結晶構造解析は1.4Aを越える超高分解能・超高精度解析となった.構造精密化は低分子化合物の解析用に開発されたプログラム・SHELXを用いて行った.結晶構造はR因子12%まで精密化された.外部から導入したCO分子はNi-Fe活性中心のFe原子ではなくNi原子に結合していた.これはDFT・理論化学計算から予想された結果とは異るものであった.生体高分子中のNi原子とCO分子の結合状態をX線結晶解析で示したのは本研究が最初である.また共鳴ラマン分光法によりNi原子とCO分子との結合による特徴的と思われるスペクトルの取得に成功した.共鳴ラマン法の結果はCO分子はNi原子に対して少し曲がった配位角度で配位していることを示していたが,結晶構造かっらもそれが確認された.Ni原子とCO分子の配位結合距離は1.7Aであった.CO結合型ヒドロゲナーゼの電子密度図を詳細に調べた結果,Ni原子に結合したCO分子とNi原子のもともとのアミノ酸配位子・システイン残基のイオウ原子との間に余分の電子密度を確認することができた.この余分の電子密度は反応途中の水素分子が阻害剤・CO分子の導入により偶然活性部位にトラップされたものである可能性が高い.また,このシステインのイオウ配位子は他のイオウ配位子と比べて極めて大きな温度因子を示しており、水素活性化のメカニズムで重要であることが明らかになった.
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