研究概要 |
今年度は,[NiFe]ヒドロゲナーゼの活性部位に結合するとCO分子の結合遊離の過程は可視光の照射によって制御し,それをX線結晶学的に確認することを目標とした.昨年度ひとつのCO結合型[NlFe]ヒドロゲナーゼの立体構造を解明し,CO分子とCys546の間に何かの原子種がトラップされていることを見出した.これにより,このCys546の重要性が示唆された.昨年度以降3つのCO結合型[NiFe]ヒドロゲナーゼ結晶(A, B, C)において様々な条件「光・結晶周りのガス雰囲気」で回折データを測定し(100K),CO分子の結合・遊離の構造変化を準動的超精密X線結晶解析法(1.1-1.2Å分解能)により解析した.その結果,阻害剤・CO分子はFe原子ではなく,Ni原子に結合することが分り,またその結合の様式は,ヘムタンパク質等で見いだされている「直線配位型」ではなく,「曲がった配位型」であることを3つの全ての結晶について確認した.さらに水素結合型と遊離型の結晶回折データから計算した差の電子密度図(Fo-Foマップ)によるとCO分子の結合と遊離の過程でNi原子とひとつのシステイン(Cys546)S原子の電子密度分布が大きく変化していることが分った.Fe原子およびその2原子分子配位子の電子密度はほとんど変化していなかった.これらのことから分子状水素の解離にはNiとこのCys546のS原子が大きく関与していることを明らかにした.
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