研究概要 |
紫外線等により受けたDNA損傷を修復する機構として、UvrABCエンドヌクレアーゼが関与する除去修復系が中心的役割を果たしている。この酵素はUvrA,UvrB,UvrCからなる多サブユニット酵素で、ATPを使って傷害をうけたDNAを認識し、傷害を含むオリゴヌクレオチドをDNAから切り取る。既に高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のUvrAとUvrB蛋白質の大量発現系を構築し、これらの精製標品をキャラクタライズすると共に、UvrB蛋白質については高分解能立体構造を明らかにしている。本年度、傷害DNAの認識機構を実験的に明らかにするため、UvrB-DNA複合体の結晶化を試みたが、まだ成功していない。またこれと並行してUvrAの結晶化も試みたが、再現性よく結晶を得るに至らなかった。 一方、塩基除去修復とミスマッチ修復、さらに相同組み換えの初期過程を担うエキソヌクレアーゼRecJ蛋白質について、大きな進展があった。高度好熱菌T.thermophilus HB8のRecJ蛋白質(57k)は大腸菌内で大量発現させると封入体を形成するが、変性剤を用いた可溶化の後、再生させ精製できた。この蛋白の限定分解からドメイン構造(46k)が浮かび上がり、これを基にドメイン部分のみを可溶性蛋白として発現させることに成功した。このドメインは特徴的な7つのモチーフすべてを含み、エキソヌクレアーゼ活性を有していた。この蛋白の結晶化に成功し、3.5A分解能までのX線回折強度を測定できた。
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