研究概要 |
RecJは一本鎖DNAを5'から31'方向に分解するエキソヌクレアーゼで、相同組み換え、塩基除去修復、ミスマッチ修復に重要な役割を果たしている、RecJには特徴的なモチーフ(MotifI〜V)が存在し、このモチーフを持つタンパク質は原核生物から古細菌、高等真核生物まで広く分布している(DHHファミリー)。RecJを含むDHHファミリーの立体構造は未知で、これらのモチーフの構造・機能相関はほとんど手つかずの状態であった。本研究では高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のRecJをとりあげ、上記のモチーフを全て含むドメイン(cd-ttRecJ,40〜463アミノ酸残基)を可溶性画分に発現させた。Cd-ttRecJは、他のRedと同様、Mg^<2+>やMn^<2+>存在下でエキソタクレアーゼ活性を保持していた。Mn^<2+>を結合したcd-ttRecJおよびそのSeMet体を結晶化させ、これらのX線回折強度を放射光を用いて収集した。Seの異常散乱を利用して位相を決定し、これを基に計算した電子密度を解釈して分子モデルを構築し、2.9Å分解能で構造を精密化した(R=22%)。RecJは、二つのドメインを一本の長いαヘリックスがつなぐという特徴的な構造をしており、分子の中央に深い溝を形成していた。その溝はArgやAsnといったDNAに結合しうる残基によって構成され、それらの残基はRecJ間で高度に保存されていた。溝の幅は約10Åであり、一本鎖DNAへの特異的な結合に適している。Mn^<2+>にはDHHファミリーの5つのモチーフのうちMotifI〜IVのそれぞれで保存されているASP, His残基が配位していた。
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