分子識別と分子問相互作用の問題を解明する上で、独自の触媒能を持つサブユニットが複合体形成に伴い大幅な構造変化と活性増幅を示すトリプトファン合成酵素が良いモデル系となる。同酵素は、一連のトリプトファン合成経路の連続した最終反応を触媒するアロステリック酵素である。バクテリアの同酵素は.αサブユニットとβサブユニットからなるα2β2四量体である。複合体形成に伴う2桁の活性増幅は、複合体形成に伴う構造変化に起因していると思われる。そこで、本研究課題では、超好熱菌、P. furiosus、由来のトリプトファン合成酵素複合体とその構成成分αとβサブユニットのX線結晶構造解析を行うことを目的とした。 先ず、αサブユニットのX線結晶構造解析を試みた。天然型について分解能2.0Åのデータを収集した。結晶の空間群はC2221であった。非対称単位中2分子のαサブユニットが存在する。位相決定は水銀と白金の誘導体を用いて重原子同型置換法で行った。構造はモデリング、リファインメントを進め最終的には分解能トリプトファン合成酵素αサブユニット単独での2.0Å分解能での構造解析に成功した。本年度は、まずαサブユニットのX線結晶構造解析の論文を発表できた。次にβサブユニットについて、最高、分解能2.3Åのデータを収集した。結晶の空間群はP212121であった。位相決定は既に報告されているS. typhimurium由来のα2β2複合体のβ2サブユニットをモデルに同型置換法で求めた。現在、構造のリファイメントも終わり、構造の詳細な検討を行っている。得られた構造はサルモネラ菌由来のβサブユニッツトと酷似していた。α2β2複合体については見かけ上きれいな大きい結晶が得られているが分解能があがらない、高い分解能でのデータを収集するためによりよい結晶と良い不凍結剤の検索中である。
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