線虫C.elegansの生殖細胞形成に関与する遺伝子群を網羅的に同定するために、われわれが確立したRNAi-by-soaking法を用いて、C.elegansの持つ遺伝子の体系的な遺伝子機能破壊により不稔となる遺伝子群を探索した。RNAiに用いるための二本鎖RNAは非重複cDNAセット(国立遺伝研・小原雄治教授作成)を鋳型として、in vitroで合成した。これまでに約2800遺伝子についての機能破壊を行い、そのうち約1%に相当する31遺伝子が生殖細胞特異的な異常を引き起こすことが明らかになった。これらの遺伝子群の機能破壊による表現型を詳細に観察したところ、生殖細胞の増殖異常、卵形成異常、生殖腺の形態異常、受精不能などの多様な異常が見られたことから、生殖細胞形成におけるさまざまなステップに関与する遺伝子群を同定できたと推測された。このなかで、HMG boxを持つ遺伝子、hmg-3についてさらに解析を行い、生殖細胞の増殖に関与していることを明らかにした。hmg-3と相同性の高いhmg-4遺伝子についてRNAiを行ったところ、幼虫期で発生を停止した。また、hmg-3とhmg-4双方の機能をRNAiによって破壊すると、胚性致死となった。したがって、hmg-3とhmg-4は胚発生期には重複した機能を持つが、後胚発生においてはhmg-3は生殖細胞特異的に、hmg-4は体細胞特異的に機能していることが示唆された。
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