DNA損傷による複製フォークの進行阻害を回避する経路の一つにバイパスDNA合成機構(損傷乗り越えDNA複製)があり、真核生物では従来の複製型DNAポリメラーゼとは性質の異なるDNAポリメラーゼ・ゼータ(DNA polymerase ζ)が関与している。これまでに明らかにされていない脊椎動物のバイパスDNA合成機構の解明を目的として、本研究ではアフリカツメガエルのDNAポリメラーゼ・ゼータの同定と精製、およびDNAポリメラーゼ・ゼータの作用機構の検討を計画した。 成果1.アフリカツメガエルの卵からREV3遺伝子をコードするcDNAを単離した。 成果2.コドンバイアスを補正することによってREV3遺伝子の一部を大腸菌で発現させる系の構築に成功し、この系を使って2種類のREV3遺伝子断片を大腸菌で発現させた。発現したREV3部分蛋白質を精製し、それぞれに対する特異的な抗体を作製した。これらのエピトープの異なる抗体を用いた免疫沈降とウエスタンブロツトにより、REV3蛋白質の予想される大きさに一致する分子量約350kDaの蛋白質をアフリカツメガエルの卵母細胞抽出液中に同定できた。 成果3.試験管内でバイパスDNA合成を検出する系の構築に成功し、アフリカツメガエルの卵母細胞抽出液中には少なくとも3種類のバイパスDNA合成活性が存在することを明らかにした。 上記の研究成果から、内在性REV3蛋白質を同定でき、免疫学的方法と酵素学的方法の2本立てでDNAポリメラーゼ・ゼータを精製する体制が整った。今後の研究では、免疫沈降法で同定したREV3蛋白質を追跡し、3つのバイパスDNA合成活性との関係を検討しながらDNAポリメラーゼ・ゼータの精製を進める。精製した酵素を使って、DNA損傷により停止した複製フォークに対するDNAポリメラーゼ・ゼータの作用機構を解明する。
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