ヒト培養がん細胞株MCF-7、SW1116(以上グループA、CDH1遺伝子を発現)、Lu65A、MKN1、T24(以上グループB、発現抑制)、HSC41、Li21(以上グループC、発現抑制)のDNAをメチル化DNA結合カラムクロマトグラフィーで解析した。グループAの細胞のCpGアイランド由来のDNA断片は低塩濃度分画に、グループBの細胞由来のDNA断片は高塩濃度分画に、グループCの細胞由来のDNA断片はA、B中間の分画に検出された。これらの結果は遺伝子発現の抑制とCpGイランドのメチル化が関連しているが、メチル化のパターンには大きな差があることを示している。 重亜硫酸修飾法により、グループAの細胞のCpGアイランドはメチル化されていないこと、グループBの細胞のCpGアイランドは全般的に密度高くメチル化されていることが示された。またグループCでは、HSC41はCpGアイランドの5'末端と3'末端にメチル化CpG配列が密度高く存在していたのに対し、Li21ではプロモータ部位の存在するCpGアイランド5'末端はほとんどメチル化されておらず、そこから1キロ塩基対程度離れた3'末端が密度高くメチル化されていた。 in vivoフットプリント解析およびDNA分解酵素感受性部位の解析を行った結果、SW1116では転写因子が細胞内で結合していることが示されたが、T24、HSC41、Li21ではプロモータ部位への何らかの因子の結合は見られなかった。またSW1116ではクロマチン構造がほどけていることが示されたが、T24、HSC41、Li21ではプロモータ部位が不活性クロマチン構造をとっていることが示唆された。 以上の結果は、CpGアイランドの高密度メチル化、プロモータメチル化は発現抑制に必須ではないことを示している。
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