研究概要 |
われわれは新しいヒト先天性白内障モデルマウスとしてSJL/J由来の突然変異マウス、RCT(Rinshoken Cataract)を発見した。白内障は生後3-3.5ヶ月のマウスに肉眼で容易に認められ、小眼球を伴う。病理組織学的解析によると、透明性を失われた水晶体レンズでは皮質部の水晶体繊維の微細構造が消失し、上皮細胞は膨張し大きさの異なる多数の空砲が含まれていた。わずかな変化は生後2日目のレンズにも認められた。遺伝解析には日本産野生マウス由来の近交系マウス、MSM/Msを使用した。RCTマウスの白内障の発症は雌雄による差がなく、F1マウスでは白内障の発症が認められなかった。このことはRCT白内障ガ劣性の表現型であり、その原因遺伝子は常染色体上にあることを示している。原因遺伝子のマッピングのために作成された413頭の生後4-5ヶ月RCTx(RCTxMSM)F1戻し交配分離固体は表現型によっては3つのグループに分離された。すなわち、1)RCTマウスと同様に肉眼で容易に白内障を観察できる(Early-onset),2)肉眼では正常にみえるが、病理解析では白内障を発症している(Late-onset),3)正常レンズをもつ。104のマイクロサテライトマーカーを用いてPCR-SSLP法により連鎖解析を行ったところ、第4染色体のD4Mit278の近傍にあるrct遺伝子(no recombination)と第5染色体のD5Mit239近傍にある修飾遺伝子、mrct(a modifier of rct,P<<0.00001)の2つの遺伝子の相互反応によって白内障の表現型が決定されることが明らかになった。現在、positional candidate cloning法およびpositional cloning法により、遺伝子の単離を進めている。
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