研究概要 |
RCT(Rinshoken Cataract)マウスはSJL/Jマウス由来の自然発症の突然変異で、先天性白内障を発症する。このマウスがヒト白内障の成因メカニズムの解明に有効なモデルマウスとなると考え、遺伝解析を行い、以下の結果を得た。1.RCTマウスの特徴 白内障は生後約3.5ヶ月で肉眼によって容易にみとめられ、小眼球症を伴う。水晶体皮質部では繊維構造が消失し、上皮細胞は膨張して、空包を多数含む。白内障の発症には雌雄の差はなく、F_1マウスを用いた解析のから表現型は劣性で、原因遺伝子は常染色体上にあることが示唆された。2.原因遺伝子の同定 日本産野生マウス由来の近交系、MSM/Ms,を用いて作成した4-5ヶ月齢の亜種間戻し交配マウスはその表現型から3つのグループに1:1:2の割合で分離された。即ち、(1)肉眼で容易に白内障を観察できる(Early onset)、(2)白内障の発症が遅く、肉眼では正常に見える(Late onset)、(3)正常の水晶体を持つ。連鎖解析の結果、第4染色体上の劣性の原因遺伝子(rct)と第5染色体上の劣性の修飾遺伝子(mrct : modifier of rct)が同定された。3.原因遺伝子のクローニング rct遺伝はD4Mit74とD4Mit122の間の約1.5cMの領域に存在する。この領域を狭めるために、約1OOO頭の亜種間交雑系を新たに作成し、連鎖解析を行なうとともに、BACcontigの構築をおこなった。その結果、rct遺伝子が存在する領域は約600kbp長までせばまり、その領域のBAC contigをほぼ構築した。この領域には6個のESTが存在しており、これらがrctの候補遺伝子である可能性は非常に高い。mrct遺伝子についてはその存在可能領域はまだ約21cMの長さがあるので、この領域を縮小するために連鎖解析を進めている。
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