1.我々が平滑筋より単離したミオシン線維安定化因子(38k蛋白質)はヒトp32のホモログである。p32はミトコンドリア内に取り込まれる際にN端の約70アミノ酸配列が消化されることが知られている。我々は平滑筋が形質変換すると細胞内でのp32の分布が細胞質から核へと変化することを見い出した。ニワトリ平滑筋から得た38k蛋白質のcDNAはシグナル配列よりも下流の配列しか含んでおらず、cDNAライブラリーを作製しシグナル配列をも含む全長のCDNAを得ようとしたが、いずれのクローンもシグナル配列の付近がGC-richで、cDNA合成が停止していた。すでに配列のわかっているヒトp32の全長の配列を単離するため、市販HeLa細胞cDNAライブラリーをテストしたが、いずれのライブラリーにもp32の全長をコードするcDNAがなかった。そこでHeLa細胞のcDNAより、RT-PCRによってヒトp32の全長のcDNAを単離した。今後このシグナル配列を認識する抗体を作製する予定である。 2.マウス大動脈平滑筋由来の細胞株AC01を使って、分化のレベルを調節する実験を行った。すでに培養液の血清濃度を低下させることによって平滑筋特異的な蛋白貧すなわちα-アクチン、高分子量型カルデスモン、デスミンの発現レベルが増加することがわかった。また逆にPDGFの添加によりこれらの蛋白質の発現レベルが著しく低下し、細胞骨格が消失した脱分化の状態になることが確かめられた。38k蛋白質の分布は脱分化の状態では細胞骨格から核小体に変わることがわかり、この蛋白質が分化のマーカーになることがわかった。
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