研究概要 |
インテグリンの接着性を制御するシグナル伝達分子とその作用に応答するインテグリン細胞内領域を決定することによって、インテグリンファミリー特異的接着制御の分子的基盤を明らかにする。この目的のため、マウスproB細胞株Baf3にヒトLFA-1を導入し、ヒトICAM-1に接着する系を樹立した。このBaf3/hLFA-1は未刺激ではヒトICAM-1に接着できないが、活性化型Rap1,PKC, PI-3キナーゼの発現によって接着できるようになる。この系を用いて活性化型Rap1によるLFA-1の接着性上昇(活性化)に必要なLFA-1細胞内領域を決定するため、まずαL鎖、β2鎖の欠失型変異体をそれぞれ導入した。β2鎖をC末端からアミノ酸731番目、744番目までそれぞれ欠失したΔ731,Δ744はいずれも未刺激での接着性が亢進し、さらに活性化型Rap1による増強が見られるのに対して、αL鎖をC末端からアミノ酸1107番目まで欠失したΔ1107は野生型と同じであったのに対し、Δ1095は未刺激では変化がなく、活性化型Rap1でも接着が亢進しなかった。これらの結果からβ2鎖は接着性を抑制的に制御し、αL鎖細胞内領域はRap1による接着制御に必須であることが明らかになった。さらにRap1応答に必要な領域を特定するため、さらに点突然変異を導入したαL鎖を作製、導入した。その結果、この領域にあるリジン残基がRap1による活性化シグナル応答に必須であることが明らかになった。この変異はPKCの活性化剤PMAによる接着制御には異常を起こさなかった。現在、PKCとPI-3キナーゼについて同様の解析を進めている。Rap1の作用についてICAM-1をコートしたプレート上での細胞運動によって解析したところ、活性化型Rap1によって細胞運動の亢進が認められた。細胞運動の亢進にはβ2鎖が関与しており、その領域を検討している。
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