研究概要 |
研究では,好中球の増殖と分化の分子機構を解明することを目的に,G-CSFの作用による細胞内シグナル伝達機構および好中球特異的転写因子MZF-2による遺伝子発現制御機構を研究している。これまでに研究代表者らは814アミノ酸残基からなるMZF-2タンパク質の機能ドメインについて解析し,アミノ末端には転写抑制ドメインが存在すること,また,そのC未端側には転写活性化ドメインが存在することを示した。平成12年度は,まず,マウス骨髄球NFS60細胞やLG細胞で発現しているMZF-2mRNAのalternative splicingについてNorthern hybridizationやRT-PCRによる詳細な検討を行ない,これらの細胞ではアミノ末端側が短かいMZF-2タンパク質(735アミノ酸)をコードするmRNA分子種が主に発現していることを新たに見いだした。従ってこれらの細胞では負の制御領域を欠いた活性型MZF-2が発現・機能していることが明らかになった。また,転写活性化領域のみからなるMZF-2変異体が優性ネガティブに作用することなどから,転写活性化ドメインと相互作用する骨髄細胞特異的コアクチベーターの存在が示唆された。他方,MZF-2の転写活性化ドメイン内の複数のアミノ酸残基がin vitroにおいてMAPキナーゼ(ERK)によってリン酸化されることを見いだした。このドメイン内のThr/Ser残基についてAla置換変異を導入して解析した結果,Ser257,Ser275,Ser295がERKによってリン酸化されることが明らかになった。これらのAla置換変異体では好中球前駆細胞における転写促進活性が野生型よりも増強することから,MZF-2の転写活性化能はERKMAPキナーゼによって負の制御を受けることが示唆された。
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