研究概要 |
サイタリン依存性キナーゼ群(CDKs)は細胞周期進行に関わる最も重要な因子である。ただし、CDK5のみは分裂を停止した神経細胞で活性が検出される特異なCDKsである。遺伝子欠損マウスを用いた研究から、CDK5は脳皮質における神経細胞の層形成に関与していることが判明している。CDK5の活性制御については、活性化サブユニットp35が必要であるということ以外殆ど判っていない。我々の最近の研究で、(a)制御サブユニットp35の蛋白量はプロテアソームによる分解で調節されていること、(b)P35のp25への限定分解がカルパインによっておこなわれること,(c)酵母のtwo-hybrid systemを用いてp35に結合する新規なチロシンキナーゼを分離したことなどが新たな結果として得られている。本研究では、(a)と(b)の結果を更に発展させた。(a)p35のin vitroにおける分解はATPとフォスファターゼ阻害剤であるmicrocystin存在下で誘導された。この分解誘導はラットの胎児脳ではみられたが、成体脳では分解が起こらず、一旦リン酸化されても、p35は脱リン酸化されてしまった。胎児脳と成体脳の分解活性を調べたところ、分解活性に加えて分解されるp35にも性質の違いがあることが判明した。(b)p35のカルパインによる認識機構を検討した。p35をあらかじめリン酸化しておくと、カルパインに対する抵抗性が現れた。このリン酸化はCdk5による自己リン酸化であることが、キナーゼ活性を持たないCdk5を用いた実験から明らかとなった。但し、リン酸化部位は(S/T)PのCdk5のコンセンサスリン酸化部位以外にあることが、リン酸化されない変異体を用いた実験によって判明した。
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