今回の研究では、哺乳類から単離した遺伝子の機能を解析するための簡便で迅速な方法の開発と、その確立を行った。その方法は、哺乳類から単離した遺伝子を両生類の初期胚の胚細胞内で強制発現させ、その結杲として胚細胞内に引き起こされた微細構造の変化を観察することにより、未知の遺伝子機能を推測しようとするものである。ここでは、哺乳類の骨格筋から単離した2種類の遺伝子(MG29とJunctophilinと名づけられた遺伝子で、両方とも骨格筋の三つ組み構造の形成に関与していると思われる)について、上記の方法を試みた。その結杲、骨格筋のMG29については、筋小胞体網の形成に関与していることが推測された。そして、Junctophilin(3種類のサブタイプ、JP-1、JP-2、JP-3からなる)については、筋小胞体膜とT管膜(あるいは細胞膜)との結合に関与していることが推測された。 以上の結杲をふまえて、MG29とJunctophilin遺伝子のそれぞれについて、ノックアウトマウスを作成し、それぞれの遺伝子の役割について詳しく調べた。その結杲、両生類の胚細胞を用いた遺伝子の強制発現実験から推測されたように、MG29をノックアウトしたマウスでは、骨格筋の筋小胞体網の形成に異常が引き起こされることが明らかになった。そして、JunctophilinのJP-1やJP-2をノックアウトしたマウスについても、推測されたとおり、筋小胞体とT管(あるいは細胞膜)との結合ができないために、骨格筋のTriad(あるいは、心筋のPeripheral coupling)構造に異常が引き起こされて、マウスは死亡してしまった。 以上の結杲から、両生類の胚細胞を用いた遺伝子の強制発現実験は、哺乳類の遺伝子機能を解析するために、簡便で迅速な方法として有効であることが明らかにされた。そして、今回の一連の研究結杲から、両生類胚を用いた哺乳類の遺伝子機能の解析法が確立された。
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