本研究では哺乳類受精時のCa^<2+>オシレーション機構を解明するために、マウス成熟卵を使用した。特に、受精時のCa^<2+>オシレーション機構の一端を担っているCa^<2+>流入機構について細胞生物学的手法を用いて、細胞内外のCa^<2+>イオン動態について明らかにした。細胞内Ca^<2+>蛍光測定法、Mn^<2+>蛍光消退法(Mn^<2+>によるCa^<2+>感受性色素Fura-2の蛍光消退)、顕微注入などの方法を用いて、以下の4つの点を明らかにした。 1.ハムスター精子抽出物(SE ; sperm extract)の顕微注入によりCa^<2+>オシレーションを引き起こさせた。この時の細胞内Ca^<2+>変化の測定と同時に、Mn^<2+>蛍光消退法により、Ca^<2+>流入を測定した。この結果を解析したところ、先ず、静止時にも、定常的なCa^<2+>流入が存上するということ。このCa^<2+>流入はCa^<2+>オシレーションが起こると最初の大きなCa^<2+>増加に伴ってさらに促進される。測定したCa^<2+>オシレーションを数値的シュミレーションによる細胞内のCa^<2+>とMn^<2+>の変化と比較したところ、細胞内に流入したMn^<2+>もCa^<2+>同様にCa^<2+>ストアーに取り込まれ、Ca^<2+>遊離と同時に、遊離されることがわかった。したがって、この持続的なCa^<2+>流入がCa^<2+>オシレーションを継続させていくことを強く示唆した。 2.SEによるCa^<2+>流入機構の存在を確かめるために、イノシトール三リン酸受容体(InsP_3R)に対するモノクローナル抗体18A10を前注入し、Ca^<2+>遊離機構を抑制した状態で、SEを注入したところ、SEそのもにによるCa^<2+>流入を示す変化は認められなかった。 3.ERポンプ阻害剤タプシガージンを添加後、イノシトール三リン酸(InsP_3)を繰り返し電流注入してCa^<2+>ストアーを枯渇させたところ、Mn^<2+>添加後に著しい蛍光消退を示したことから、マウス卵にも、明確な容量性Ca^<2+>流入が存上することがわかった。 4.SEやInsP_3の顕微注入時には、顕著なCa^<2+>流入が認められた。このことは最初の大きなCa^<2+>増加時に、容量性Ca^<2+>流入が誘起されると考えられる。
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