我々はCrkのSH3に強く結合するRas family GTPaseのGEFであるC3Gのショウジョウバエにおける相同タンパク質(DC3G)がショウジョウバエの形態形成過程においてJNKの活性化を引き起こしうる事を見出した。そこで本年度は以下のような解析を行った。 (1)ショウジョウバエにおけるCrk結合因子の同定 我々はC3GがCrkのSH3に結合する事から、C3Gの活性化がCrkを介して起こる事を想定した。そこで本年度はショウジョウバエにおけるCrk相同因子(DCrk)のシグナリングの上流で機能すると予想されるタンパク質をコードする遺伝子DCAS、DPaxillinの同定を行った。DCASは哺乳類におけるCrkのSH2ドメインに結合するタンパク質であるp130Casと機能的に相同な分子をコードしていた。興味深い事にDCASはDCrk及びDC3Gの発現とは異なりショウジョウバエの中枢神経系でのみ強く発現していた。 (2)DC3G、DCrk、DCASの遺伝子機能破壊の試み ショウジョウバエを材料に使う事の最大の利点は遺伝学的解析が行える事である。既存の変異株のストック中にはDC3G、DCrk、DCASいずれの変異体も存在しなかった。そこで、これら遺伝子のLoss-of-functionの表現型を明らかにするために、近年ショウジョウバエや線虫において、Post transcriptional gene silencingを起こす事がしられているdouble strand RNAによるRNA interference(RNAi)を試みている。現在RNAiを発生の過程で組織特異的に引き起こすトランスジェニックのハエの系統を作製しているところである。
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