研究概要 |
細胞が癌化すると糖タンパク質のN-型糖鎖が高分岐化し、これに伴いβ-1,4-ガラクトース転移酵素(β-1,4-GalT)IIの遺伝子発現が減少し、β-1,4-GalTVの遺伝子発現が増大することを見つけた。さらにB16-F10マウスメラノーマ細胞にβ-1,4-GalT IIセンスcDNA導入したり、β-1,4GalT VアンチセンスcDNA導入し、遺伝子発現を正常方向に戻し、遺伝子導入癌細胞をC57B/L6マウス皮下に移植したところ、腫瘍形成が抑制された。この原因を解明するため、以下の解析を行なった。 (1)腫瘍塊の組織化学的解析:遺伝子導入した癌細胞がマウス皮下で造った腫瘍塊をホルマリンで固定後切片を作製し組織化学的に解析すると、両遺伝子導入癌細胞が造る腫瘍塊は細胞が密に配列しているのに対して、対照の腫瘍では細胞間に空隙が見られ細胞は散在していた。 (2)各腫瘍塊からタンパク質画分を調製し糖鎖構造を解析すると、遺伝子導入細胞で分岐側鎖からガラクトースを欠いた糖鎖構造が検出された。 (3)遺伝子導入細胞を培養皿で培養しsub-confluentの状態を観察すると、両遺伝子導入癌細胞で部分的な細胞間接着が見られ、特にβ-1,4-GalT VアンチセンスcDNA導入細胞では上皮細胞様の形態変化が見られた。 (4)培養系で細胞の増殖速度を測定した結果、β-1,4-GalT IIセンスcDNA導入細胞は対照より25%低下し、β-1,4-GalT VアンチセンスcDNA導入細胞は対照より50%低下していた。 (5)対照及び遺伝子導入細胞をフィブロネクチンをコートしたプレート上で培養すると、対照細胞の多くは接着できず丸まっているが、両遺伝子導入細胞はフィブロネクチンへ接着し、伸展している様子が、ファロイジンでアクチン繊維を染色することで観察された。
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