ウズラ背部羽毛列には黒、黄色からなる縦縞色素パターンがあるが、その形成機構を、色素パターンが激変する黒色初毛致死突然変異体(Bh)を用いて明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、RDA(Representational Difference Analysis)法によるBh遺伝子に連鎖した遺伝マーカーの単離と簡便な遺伝子型判定法の確立を行った。また、各遺伝子型胚の発生過程で、羽毛色素を合成するメラノサイトの分化・増殖パターンを、初期メラノサイト(メラノブラスト)マーカー(MelEM抗原やMITFタンパク質、Mitf mRNA)の発現を解析して調べた。 HindIIIを用いたRDA法で得た、Bh遺伝子座に連鎖するDNA断片に基づいた簡便な遺伝子型判定法を確立した。これは、多型の原因となったHindIII切断部位をはさむ形でプライマーを設計し各遺伝子型DNAを鋳型にPCRを行い、次にHindIII処理によるPCR産物の切断と電気泳動を組み合わせたもので、どの発生段階でも遺伝子型を判定できる。組換え率は1/375であり、このマーカーがBh遺伝子座に強く連鎖していることを示している。他の制限酵素を用いたRDA法は現在解析中である。 上記の方法により遺伝子型を判定し、各遺伝子型胚でMelEM抗原の発現に関して免疫組織化学を行った。野生型胚の場合、羽毛芽が形成途中でまだ色素パターンが現れる前にMelEM抗原陽性メラノブラストが背部表皮細胞集団中で縦縞状に分布していた。ヘテロ型やホモ型ではこのパターンが著しく乱れた。この結果は、MelEM抗原発現パターンが羽毛芽色素パターンの原パターンに対応すること、Bh遺伝子が羽毛芽色素出現以前に働き、MelEM抗原の発現に関与することを示唆する。MITFタンパク質とMitf mRNAの発現は現在検討中である。
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