ウズラ胚背部羽毛芽列における黒、黄色の縦縞色素パターンの形成機構を探るために、色素パターンが激変する黒色初毛致死突然変異体(Bh)を用いて研究を行い、次のことを明らかにした。 1.GDRDA法によりBh遺伝子座に連鎖する3つの遺伝マーカーを単離し、あわせてPCRを用いて簡便にそれらの遺伝的多型を判定する方法を確立した。またこれらの遺伝マーカーとBh遺伝子座との組換え率から染色体上でのBh遺伝子座との大体の距離を求めた(1-14cM)。これらのマーカーは、染色体上でBh遺伝子座に対していずれも同じ側に位置していた。 2.羽毛芽色素を合成するメラノサイト(メラノブラスト)の分化・増殖に関係する因子(Mitfタンパク質、EdnrB2、Kit1、Kit)のうち、Mitfタンパク質とEdnrB2は発生の早い時期から全てのメラノブラスト(発生が進むとメラノサイトでも)で発現していた。Kit1は羽毛芽の表皮細胞、Kitは発生の進んだメラノブラスト、メラノサイトで発現していた。しかし、これらの遺伝子の発現は各遺伝子型によって差はなく、この結果はBh遺伝子の作用点がこれらの遺伝子の作用とは独立であることを示唆している。 3.MelEM抗原の発現については、野生型胚の場合、羽毛芽が形成途中でまだ色素パターンが現れる前に、陽性メラノブラストが背部表皮細胞集団中で縦縞状に分布していた。このパターンは後に発生する黒色羽毛芽列に相当した。ヘテロ型やホモ型ではこのパターンが著しく乱れた。これらの結果は、MelEM抗原の発現パターンが羽毛芽色素パターンのうち黒色のものの原パターンに対応し、またBh遺伝子が羽毛芽色素出現以前に働くことを示唆している。 4.色素合成に関係する遺伝子群のうち、Tyrp1、Dctの発現は黒色メラノサイトに特異的であった。ホモ型では、羽毛芽のメラノサイト全てがTyrp1、Dct陰性で、これらの遺伝子はBh遺伝子より下流にある。
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