研究概要 |
本研究は,我々の単離した線維芽細胞増殖因子(FGF)であるFGF10とFGF18の歯、皮膚構造物、軟骨・骨、などの器官発生における役割を明らかにし,器官形成・再生の分子的基盤を解明することを目的とした. 1.FGF10の機能解析 Fgf10欠失マウスの表現型解析を行ったところ、器官形成・再生に重要な形態形成過程である上皮-間葉相互作用により形成されるほとんどの組織・器官に,異常が観察された.そこで,その異常とFgf10の発現部位との関係をさらに明確にするために,組織切片を用いたin situ hybridizationを行なった.その結果,Fgf10は主に間葉の組織に発現していた.しかし,例外もあり,脳下垂体や耳胞では上皮にも発現することが観察された.これらの結果から,Fgf10は例外もあるが,主に上皮-間葉相互作用の上皮に作用する間葉の因子であることがより明確になった. 特に、マウスの切歯は生涯再生し続ける器官であり、Fgf10欠失マウスでは切歯の幹細胞が消失していた。したがって、FGF10が切歯の幹細胞の維持に必要であることが示唆された.さらに,FGF10がニワトリ初期羽毛原基の間葉に発現することを見い出した.Fgf10のニワトリ胚を用いた機能解析により,FGF10は羽毛のプラコード形成に関与していることがわかった.羽毛はヒトなど哺乳類の毛の相同器官であり、FGF10は,羽毛や毛などの皮膚構造物の形成過程でプラコード形成に関与していることが推察された. 2.FGF18の機能解析 Fgf18は四肢の原基である肢芽の間葉に発現する.その機能を調べるためにFGF18が吸着したビーズを肢芽に移植してその効果を調べた.その結果,骨化遅延をともなった肢の短縮が観察された.軟骨・骨形成に関与する遺伝子の発現パターンの変化を調べたところ,FGF18は軟骨・骨形成を調節する因子の一つであることが示唆された.
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