研究課題/領域番号 |
12680712
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
発生生物学
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大内 淑代 徳島大学, 工学部, 助教授 (00253229)
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研究分担者 |
伊藤 信行 京都大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (10110610)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | FGF / Fibroblast Growth Factor / 線維芽細胞増殖因子 / 器官形成 / 形態形成 / 幹細胞 / FGF10 / 上皮間葉相互作用 |
研究概要 |
維芽細胞増殖因子10(FGF10)は、角化細胞増殖因子に類似するFGFとして発見された細胞外シグナル分子である。その発生学的役割については、過剰肢(Dasoku)誘導実験やノックアウトマウスを用いた解析から、四肢、肺、涙腺、膵臓、乳腺や外性器など様々な器官の形成において重要な役割を担っていることが明らかにされている。本年度、私は、歯を器官形成のモデル系にとりあげ、これらの器官の形態形成におけるFGF10の役割を調べ、FGF10が上皮系幹細胞の増殖と維持に関与する因子であることを示した。 マウスの切歯は再生する組織であり、その幹細胞は切歯先端部のcervical loopに存在する。しかし、この幹細胞集団がどのようにしてできるかわかっていなかった。最近、マウス切歯をモデル系にして、FGF10が成体幹細胞の増殖と細胞分化の運命決定を調節していることが示された。そこで、FGF10が、歯の器官形成期において幹細胞集団が作られる過程にどのように関与しているか明らかにする目的で、2つの実験を行った。まず、FGF10 KOマウスの切歯の発達を調べた。FGF10欠失マウスの切歯はキャップステージまでは正常に発生する。しかし、その後、cervical loopが形成されないことがわかった。そこで、FGFメンバー、FGF3とFGF10の発生途上の切歯における発現パターンを調べた。両者はともに、切歯原基に発現していたが、胎生16日ではその発現領域が重複しておらず、FGF10の機能をFGF3が補うことができないことによると考えた。FGF10 KOマウスの切歯の上皮は、正常マウスと比較して、成長が限られていることもわかった。次に、器官培養系を用いてFGF10中和抗体の切歯原基への影響を調べた。培地にFGF10中和抗体を加えると、cervical loopに細胞死がおこったが、FGF10タンパク質を投与すると細胞死を防ぐことができた。以上の実験結果から、FGF10シグナルは、器官形成期の切歯幹細胞コンパートメントをつくりその生存を維持するはたらきがあることが示唆された。
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