初期胚の形態形成運動の分子機構を解明するために、アフリカツメガエル初期胞胚のcDNAライブラリーから、原腸陥入運動に影響を与える遺伝子を発現スクリーニングにより分離した。得られたPOZ/Zinc fingerタイプの転写因子champignon (cpg)は、初期胚で過剰発現させると原腸陥入を阻害する。cpgの注入により原腸陥入が阻害された胚と対照胚からそれぞれの蛋白を嚢胚期に抽出し、二次元電気泳動を行い比較すると、cpg注入胚で等電点が顕著にbasic側にシフトする61kDdaの蛋白が見つかった。61kDa蛋白の部分アミノ酸配列を調べた結果、Stress-induced-phosphoprotein 1(STI1)、Hsp70/Hsp90-organizing protein (Hop)、Transformation-sensitive proteinなどと呼ばれる燐酸化蛋白(XSTI1)であることが明らかになった。STI1はHSP70やHSP90に結合しその機能を調節するため、cpgによる原腸陥入の阻害はXSTI1の脱燐酸化を介して、細胞骨格に結合するHSP90 chaperoneの機能を変化させることが原因となっていると考えられる。一方、初期胚をLi処理すると発現が減少する遺伝子Xoomのantisense RNAを初期胚に注入すると、外胚葉細胞のepibolyを阻害するが、中胚葉細胞の移動運動や周縁帯細胞層のconvergent extensionには影響しない。Xoomは細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインからなり、ヒトの110kDa antigenとホモロジーをもつ糖修飾された膜蛋白をコードする。Xoomのantisense RNAを注入した胚では、種々の細胞分化は正常であるが、外胚葉細胞のアクチン繊維のdisorganizationが起る。従って、Xoom蛋白は細胞分化には影響せずに原腸陥入の細胞運動、特に外胚葉のepibolyに関与する膜貫通型蛋白である。
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