研究概要 |
精子分化過程には、減数分裂開始機構という未解決の問題がある.我々は、精原細胞の第7世代に減数分裂に入るかどうかのチェックポイントがあり、減数分裂に入らなかった場合はアポトーシスを起こすと考えられることを提案した.セルトリ細胞から分泌される減数分裂開始因子の候補は、IGF(insulin-like growth factor)-I、SCF(stem cell factor), activin, BMP(bone morphogenetic protein)であると考えられた。そこで、BMPとSCFのcDNAを単離して発現を解析し、また器官培養や精原細胞のみの培養に加えて、減数分裂開始への影響を調べることを目的とした. 1)ヒトBMP-2,-4をイモリ精巣器官培養に加えると、プロラクチン同様に精原細胞(第7世代)にアポトーシスを起こす。この効果はFSHやIGFによってレスキューされたが、SCFによってロレスキューされなかった。 2)イモリBMP-2のcDNA,を単離し、そのmRNAの発現ステージを調べたところ、精原細胞ステージの体細胞分画に強く発現していた。精単からBMP受容体のcDNAのクローニングを行った。BMP1型および2型受容体とも精原細胞期、精母細胞期および丸い精細胞期のすべてのステージで発現がみられ発現量にほとんど差はみられなかった。 3)ヒトSCFを精巣の器官培養に加えると、精原細胞の増殖が促進され、精原細胞は第7世代まで進行したが・第一精母細胞へは分化せず、アポトーシスを起こした.この結果は、SCFが精原細胞の増殖を促進するが、減数分裂を開始させる因子ではないことを示唆する. 4)イモリSCFとc-kit受容体のcDNAを単離し、mRNAの発現を調べたところ、SCFはほぼ全てのステージにおいて発現が見られたが、c-kitは精原細胞と精母細胞ステージに高い発現が見られた。
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