1.FGF10は間充織メディエーターとなりうるか? 胎齢15.5日(♂)、16.5日(♂)の野生型マウス尿生殖洞をFGF10存在下に5日間無血清培地で器官培養し、テストステロン非存在下に尿生殖洞に前立腺芽を発生させうるかどうかを調べた結果、いずれの尿生殖洞からも前立腺芽が発生した。FGF10は強い前立腺芽誘導能をもち間充織メディエーターとなり得ることが示唆された。 2.FGF10ノックアウトマウスの胎児はテストステロン存在下で前立腺芽を発生することができるか? 胎齢15.5日(♂)、16.5日(♂)の野生型およびFGF10ノックアウトマウス(♂)胎児のヴォルフ管基部がついた尿生殖洞を5日間テストステロン存在下で器官培養した後、外植体の組織を調べた。野生型尿生殖洞は明確な前立腺と貯精嚢を形成したが、FGF10ノックアウトマウスの尿生殖洞では、上皮の増殖は活発であったにもかかわらず、そのいずれの器官も形成しなかった。このことは、FGF10が尿生殖洞からの前立腺の発生のみならず、ヴォルフ管からの貯精嚢の発生にも必須であることを示している。 3.FGF10ノックアウトマウスの胎児における前立腺芽形成阻害は外から与えたFGF10によってレスキューすることができるか? 胎齢15.5日〜17.5日の雄FGF10ノックアウトマウス尿生殖洞を、テストステロンおよびFGF10存在下で5日間無血清培地で器官培養し、尿生殖洞に前立腺芽を発生させうるかどうかを調べた結果、15.5日胚では前立腺芽は発生しなかったが、16.5日胚、17.5日胚では前立腺芽の発生がみられた。 以上の結果は前立腺形成時のシグナル伝達にFGF10が大きく関与していることを示している。
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