マウス胎齢16.5日の尿生殖洞の器官培養から次の事がわかった。 1.FGF10は強い前立腺芽誘導能をもち間充織メディエーターとなり得る。 2.FGF10KOマウスの尿生殖洞をテストステロン存在下で器官培養しても前立腺芽をつくることはできない。また、FGF10KOマウスの胎児における前立腺芽形成阻害は外から与えたFGF10によってレスキューすることができる。 以上の結果は前立腺形成時のシグナル伝達にFGF10が大きく関与していることを示している。そこで胎児の尿生殖洞におけるFGF10タンパク質をはじめとする前立腺形成に関連すると考えられる因子の発現パターンを検討した。 1.FGF10タンパク質は、前立腺芽の形成がみられない胎齢15.5日の尿生殖洞では腹側の間充織および上皮に発現しており、前立腺芽の形成が活発におこるE16.5〜E18.5では上皮だけに発現し、胎齢19.5以降ではその発現が消失した。 2.Nkx3.1転写因子は前立腺芽の形成が始まる胎齢16.5日から上皮に発現しその後は前立腺芽全体に発現していたが、胎齢19.5日以降ではその発現が消失した。 3.BMP4タンパク質は前立腺芽形成がもっとも活発な胎齢17.5日に間充織に一過性に発現し、P-Smad1はE18.5日以降に上皮と間充織の境界に存在した。特に腹側にある前立腺芽の基底膜に沿ってその存在が多く確認された。 以上の結果は前立腺形成時のシグナル伝達にはFGF10やBMP4の間充織因子のほかに、P-Smad1やNkx3.1などが関与している可能性を示し、前立腺形成における上皮間充織相互作用の重要性を示唆している。
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