研究概要 |
1)ラットの内側前頭前野と視床下部にFluoro-goldとFluoro-redをそれぞれ注入し、扁桃体に逆行性に標識される細胞を検索した。とくに扁桃体後核および隣接する海馬CA1,CA3,海馬支脚に見い出された二重標識細胞は、軸索側副枝により視床下部腹内側核および乳頭体前内側核に投射することが明かとなった。 2)扁桃体後核の神経細胞の大部分は、エストロジェン受容体を発現し、性行動および攻撃的行動と密接な関係があると考えられた。その機能を調べる目的でカルシウム結合蛋白のタイプ、GABA神経細胞の局在につき解析を進めている。 3)ラットの扁桃体後核にトレーサーとして10%BDAをイオン導入法により注入し、3週間後に固定して順行性に標識された神経終末を検索した。この結果、扁桃体後核の遠心性線維は海馬CA1、CA3、扁桃体亜核、分界条床核、視床下部腹内側核、外側中隔核、側坐核、内側前頭前野に投射することを明らかにした。 4)NMDA注入により扁桃体後核を両側性に破壊したラットに、恐怖条件付けを行った。行動学的解析ではフリージング時間が増加し、機能形態学的解析では扁桃体亜核、海馬、中脳中心灰白質においてc-Fos、Egr-1の発現が変化した。これらの結果より扁桃体後核は扁桃体、海馬、視床を介する恐怖条件付け反応の調節、とくに抑制に関与していることが推定された。
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