研究概要 |
1.扁桃体後核之ニューロンの性状と投射領域の検索 (1)ラットの内側前頭前野と視床下部にFluoro-goldとFluoro-redをそれぞれ注入し、扁桃体に逆行性に標識される細胞を検索した。扁桃体後核および隣接する海馬CA1,CA3,海馬支脚に二重標識細胞が発見された。これらのニューロンは軸索側副枝により視床下部(腹内側核および乳頭体前内側核)と内側前頭前皮質に投射することが明らかとなった。 (2)扁桃体後核の神経細胞の大部分は、エストロジェン受容体を発現し、性行動および攻撃的行動と密接な関係があると考えられる。ラット扁桃体後核では、GABA陽性の神経細胞の蜜密度は約5%、pervalbumin含有神経は約5%、calbindin含有神経は約4%、ER-α発現ニューロンは雌ではほぼ100%、雄では45%であった。 (3)ラットの扁桃体後核に順行性トレーサーとしてBDAを注入し、ラット脳で標識された神経終末を検索した。この結果、扁桃体後核は海馬CA1、CA3、扁桃体亜核、分界条床核、視床下部腹内側核、外側中隔核、側坐核、内側前頭前野に投射することが明らかとなった。 2.NMDAによる扁桃体後核破壊後のラットに恐怖条件付けによる行動解析および機能形態的解析を行なった。慢性のストレス負荷の影響を見た結果、a)軽度のfootshock条件付け(0.6mA,3sec×30回,30min/day)を、5日間負荷すると%freezing時間がコントロール4%にたいして43%と有意に増大した。b)血中のcorticosterone濃度は、4日目にコントロール3.2ng/nlにたいして35.3ng/nlと有意に増大した。c)脳内のc-Fosの発現には有意の変化を認めなかった。また、過度のfootshock条件付け(0.6mA,3sec×60回,30min/day)を負荷した場合では、freezing時間の増大は1日負荷で飽和に達したと思われ、corticosterone量は、2日には増大反応を示したがその後は有意の変化を示さなかった。これらの結果を考慮し、新しく設定した実験条件でさらに本実験を進めている。
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