1.ニワトリ視蓋において、免疫グロブリンスーパーファミリー細胞接着分子のSC1はその視神経受容層に特異的に発現している。視神経節細胞軸策終末の視蓋での層特異的な結合におけるSC1の役割を調べる目的で、網膜片と視蓋スライスの共培養系にSC1特異抗体を添加し、培養下で再現される視神経節細胞軸策末端の特異受容層への留まりが乱され、対照群と比較して非視神経受容層へのはみ出しが多くなることを見出した。一方で、末端の分枝の程度には影響を与えなかった。 2.哺乳類中枢神経シナプス形成過程における膜表面分子の機能を、できるだけ生体に近い神経連絡様式を保った系で調べるために、新生マウス海馬スライスを有孔疎水性膜上で3週間以上培養可能な系を確立した。 3.このスライス標本にアデノウィルスを用いてGFP遺伝子を発現させ、シナプス形成期の神経細胞の形態変化を観察した。その際、グリア細胞への感染を避けるために、Cre組み換え酵素を神経特異的なCaMKIIのプロモーターで発現するトランスジェニックマウスを使用し、組み換えによって遺伝子がはじめて発現するようなベクターを利用して神経細胞への導入特異性を高めた。この系において、二光子励起蛍光顕微鏡を用いてPSD95-GFP、Zip45-GFPの動態を観察し、樹状突起中の棘突起におけるシナプス部位への集積と拡散が、分散培養系とほぼ同様であることがわかった。 4.N-カドヘリンのC末端にGFPを融合させた遺伝子のアデノウィルスベクターを作成した。現在、そのスライス培養神経細胞内での動態を検討中である。上記の培養、遺伝子導入、観察法を用いて、シナプス形成、維持におけるN-カドヘリンの役割を調べる目的で、アンチセンスオリゴDNAの効果を調べている。
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