本研究費を用いて、1)外側頭頂間溝野がV3A野から投射を受け、前頭頂間溝野へ投射すること、2)V3A野の線維連絡の詳細、3)VP野とV3A野およびV2野との線維連絡について研究した。 ニホンザル頭頂間溝の外側壁に存在する外側頭頂間溝野は空間の認識と運動空間構成に関与している。本研究で、この領野の後部からコンピュータグラフィック上の三次元図形に反応する神経細胞を記録し、さらにこの部位が三次視覚皮質複合体のうちV3A野から入力を受け、前頭頂間溝野へ投射することを証明した。前頭頂間溝野から運動前野への投射は良く知られており、これらの神経回路が運動空間の構成に重要な役割を果たしていることが示唆された。この結果は国際的に評価の高いJ Neurosciに掲載された。 V3A野は背側視覚皮質路の一部と考えられているが、その線維連絡についてはこれまでほとんど分かっていない。そこで頭頂葉へ多くの線維を送っているV3A野へのトレーサー注入標本を詳しく検討した。その結果、V3A野が同側および対側のV2野の背側部と腹側部の皮質と双方向性の線維連絡を持っていること、同側および対側の他の三次視覚皮質複合体V3野およびVP野と双方向性の線維連絡を持っていること、V3A野がV1野へ投射していることを発見した。さらに驚くべきことには、V2野のチトクロームオキシダーゼ染色陽性構造とV3A投射神経細胞の分布との関係を検討し、背側視覚路へ投射しているチトクロームオキシダーゼ反応陽性の太い帯のみでなく、腹側視覚路へ投射しているチトクロームオキシダーゼ反応陽性の細い帯と帯の間の反応陰性の領域もV3Aに投射していることがわかった。この結果は現在投稿中である。 三次視覚複合体の一部であるVP野は、腹側皮質視覚路の一部と考えられているが、その線維連絡についてもこれまであまり理解されていない。そこで、三次元視覚の神経回路をさらに明らかにする目的で、VP野に神経トレーサーを微量注入した。その結果、同側および反対側のV3A野と双方向性に線維連絡を持っていることを証明した。また、V2野の腹側部と双方向性の線維連絡を確認した。VP野に投射するV2の神経細胞も、腹側視覚路へ投射しているチトクロームオキシダーゼ反応陽性の細い帯と帯の間の反応陰性の領域だけでなく、背側視覚路へ投射しているチトクロームオキシダーゼ反応陽性の太い帯もV3Aに投射していることがわかった。この結果も現在投稿中である。
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