1、扁桃体基底外側核の吻側部に順行性標識物質であるビオチン化デキストランアミン(BDA)を注入し、線条体腹外側部におけるBDA標識終末のシナプス様態を解析した。線条体ニューロンにシナプス接合していると認められた標識終末(N=112)のうち、大部分(N=102)のものは樹状突起棘に、また少数(N=10)のものが樹状突起幹に非対称性のシナプスを形成していた。この場合、多くの樹状突起棘はミトコンドリアや神経細管を含まない短径0.5μm前後の構造物として認められたが、時には滑面小胞体から構成されるspine apparatusを含むもの、あるいは樹状突起幹と細いstalkによって連結されているものも観察された。 2、基底外側核線維を受ける線条体ニューロンが黒質網様部背外側部に投射することを明らかにする目的で、BDAを扁桃体基底外側核に、コレラトキシンBサブユニット(CTb)を黒質網様部背外側部に注入し、BDA標識線維の終末野と、CTb標識ニューロンの分布域が一致する線条体の腹外側部を電顕下で観察した。CTbによる標識を示す反応産物は線条体ニューロンの細胞体や樹状突起には認められたが、BDA標識終末とシナプス接合する樹状突起棘の部分には反応産物が含まれないことが多かった。このため、黒質投射ニューロンのマーカーとして知られているプレプロタキキニン(PPTA)やプレプロダイノルフィン(PPD)の抗体を用いて、基底外側核線維とPPTAあるいはPPD陽性ニューロンとのシナプス結合をさらに検索した。その結果、基底外側核線維と線条体腹外側部に見られたPPTAあるいはPPD陽性ニューロンの樹状突起棘間にシナプス形成が認められた。これらの電顕所見から、基底外側核線維は黒質網様部背外側部に投射する有棘ニューロンとシナプス結合していることが明らかになった。
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