神経根引き抜き損傷および末梢神経切断によって生じる脊髄膠様質におけるheat shock protein27(Hsp27)の経時的発現を免疫組織化学的に検討した。方法はラットの腰神経を椎間孔近傍にて牽引し、前根と後根の両方を引き抜いた損傷モデルと後根神経節(DRG)より末梢での神経切断モデルを作製した。脊髄の凍結切片を作製し、抗Hsp27抗体による免疫組織化学染色の他に抗glutamine synthetase(GS)抗体との蛍光抗体法による二重染色を行った。その結果、引き抜き損傷モデルではHsp27は24時間後より傷害側の脊髄膠様質に存在するGS陽性のアストロサイトに選択的に発現した。7日後よりHsp27の発現様式は点状の分布に変わり、14日後の免疫電顕にてアストロサイトの突起の末梢部に局在していた。末梢神経切断モデルではHsp27は48時間から傷害側の膠様質で弱い発現を認め、GSとの共存を部分的に認めた。7日後より点状の分布が明らかとなり21日まで経時的に増強した。以上、神経根引き抜き損傷モデルの脊髄後角の膠様質において、Hsp27はその病変分布の描出に極めて有用であり、受傷早期より小型知覚神経細胞が局在する膠様質のアストロサイトにストレス反応を生じ、産生されたHsp27はその後経時的にシナプス近傍へ移行すると考えられた。一方、末梢神経切断モデルでは、DRGで産生亢進したHsp27が傷害側の膠様質に軸索輸送されるとの報告があるが、我々の結果からは末梢神経切断モデルでも膠様質のアストロサイトに発現が誘導されることが示された。この実験モデルにおいてGFAP、substance P、synaptophysin、p38の発現変化についても検討し、解析を進めている。
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