研究概要 |
仙髄副交感節前神経に対する中枢性および末梢性調節機構を明らかにする目的で,平成14年度(3年計画の最終年)は以下の研究計画を重点的に行った。 1.ラット仙髄節前神経細胞に対するVanilloid Receptor1(VR1)陽性神経入力 有害刺激の受容に関わるVR1陽性感覚神経の仙髄節前神経細胞に対する投射と骨盤臓器内末梢神経線維分布を逆行性トレーサー実験とVR1免疫組織化学により調べ,以下の結果を得た。 1)骨盤内臓に分布する感覚神経細胞はL6,S1後根神経節(DRG)とL1-L3レベルのDRGに存在し,そのうち56%(L6,S1),85%(L1-L3)がVR1陽牲で,さらにcalcitonin gene-related peptide(CGRP)を共存するものが48%(L6,S1),83%(L1-L3)で,substance P(SP)と共存するものが18%(L6,S1),41%(L1-L3)であった。 2)骨盤内臓にはCGRP, SP陽性線維が多数分布しているが,VR1陽性線維が多く認められるのは尿管,膀胱底部,尿道起始部の上皮下および平滑筋層で,尿道下部,直腸など他の臓器にはあまり認められなかった。 3)脊髄内VR1陽性終末は,脊髄後角のI, II層のSP, CGRP陽性線維および後角外側を回って節前神経に至るSP, CGRP陽性線維の分布と一致して認められた。 2.ラット仙髄節前神経細胞に対する下降性神経入力 仙髄(L6,S1)節前神経細胞領域に分布する神経終末のうち,脳幹からの下降性入力とその起始細胞を明らかにするために,仙髄(L6,S1)からの逆行性トレーサー実験と神経マーカーに対する免疫組織化学を行い,以下の結果を得た。 1)脳幹では,青斑核,青斑下核,延髄腹外側部網様体,縫線核などに逆行性標識細胞を認めた。 2)このうちtyrosine hydroxylase(TH)陽性の標識細胞は青斑核およびに延髄腹外側部網様体に極少数存在し,縫線核ではserotonin(5-HT)神経細胞の約7%が標識されていた。この結果は,仙髄レベルおけるカテコラミンおよびモノアミン神経終末は下降性よりも仙髄内在性神経由来のものが優位であるこという先に行った脊髄横断実験の結果を支持するものと考えられる。 以上,本研究の結果を基に,仙髄レベルにおける脊髄調節機構の特異性という課題について,今後の研究をつなげる予定である。
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