本研究では脳腫瘍特に悪性グリオーマの遺伝子治療の基礎的実験として、近年報告されたミクログリアの血液脳関門を通過出来る能力を利用し、腫瘍細胞の増殖抑制に関わる目的遺伝子をtransfectionしたミクログリアを作製し、末梢血管より、動物個体に投入するシステムの開発を目指した。成熟マウスの心臓穿刺によるミクログリアの脳内導入では、投与後24時間でも市販の導入方法では脳血管内にとどまるものが多く、脳実質への移行は5%以下と効率が悪く、アデノウイルスベクターによるtransfection方法にても10%と低く、これらの結果はラット、マウス、砂ネズミなどいずれの動物においても同様の結果であったため、ミクログリアの使用を断念し、目的遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを直接脳内へ投与する方法に変更した。血液脳関門の形成が不完全な生直後の動物では、浅側頭静脈よりのAdeno Virus vector投与で、高率に脳内実質への移行が確認できたが、、成熟ラットではやはり、開頭手術により、目的部位への直接的なinjectionが必要であった。本実験では、アストロサイト特異的プロモーター(GFAP)をもち、チミジンキナーゼを発現させることの出来るCre/loxPシステムを採用した。ウイルスは作製が終了しており、培養アストロサイトではその増殖抑制効果が確認されている。現在C6グリオーマ細胞を用いたラット脳腫瘍モデルを作製し、その治療効果を検討中である。
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