Wnt1は小脳と中脳の形態形成に重要な役割を果たす遺伝子であることは知られているが、それらの領域の形成にどのように影響するかに関して、詳細な報告はなされていない。胎生14日、16日、18日、生後0日、成獣のswayingマウスの小脳と中脳の形成、生後0日-5日までのBrduによる細胞分化の解析、小脳とオリーブ核の相関性について観察した。 Swayingマウスの小脳と中脳の形成の遅延は胎生期14日にはすでに確認でき、この形成の遅れは出生直後まで顕著に持続していた。また中脳領域(上丘と下丘)の区分は成獣までかなり不明確で、また小脳と中脳の融合は胎生18日以前からかなり明確であった。これらのことから小脳と中脳の境界の消失、中脳の各々の領域への分化の消失はこれらの領域の形成不全と強く相関関係を持って引き起こされていることが推測できた。 生後0日-5日のswayingマウス小脳ではBrduに標識される細胞は外顆粒細胞層と皮質内に散在する細胞(多分、顆粒細胞と考えられる)で観察でき、その標識細胞の数も各々の時期において対照のものよりも多く見られた。このことは小脳を形成する細胞の分化の遅れがwnt1遺伝子により引き起こされていることが推測できた。またswayingマウスでは左右のオリーブ核の非対称性とその核を構成する細胞の減少がみられ、オリーブ核の異常が小脳前葉の形成異常に強く影響されていることが推測できた。
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