研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症などの変性疾患や髄鞘形成不全、脱髄疾患などの神経疾患、ニューロフィラメント(NF)遺伝子過剰発現動物及び老化で、神経細胞体あるいは軸索にNFが蓄積し神経細胞が変性するが、NF遺伝子の過剰発現トランスジェニックマウスの結果からこのNFの蓄積はNFの遺伝子変異と関連しているのではないかという発想で、NF蓄積のメカニズムを解明する一環としてNFサブユニットのNF-L, NF-M及びNF-Hの3種類の遺伝子をそれぞれノックアウトしたマウスを作製し、神経細胞の変化を解析した。また他の中間径フィラメントにはみられないMFの構造であるMF-MとNF-HのC末端領域で形成されるクロスブリッジの存在意義とNF蓄積及び神経疾患との関係から、それそれのC末端除去及び両蛋白のC末端同時除去ノックインマウスの神経細胞及び変異NFも解析した。すべて種類のマウスにおいて変化は軸索の構造にみられ、細胞体の構築にはほとんど影響がみられなかった。NF-L欠損マウスではNF-M及びNF-HのmRNAは発現するがその蛋白はほとんど発現せずNFが形成されず、微小管が増加したが、軸索が有意に細くなった。NF-M欠損ではNF-L蛋白の発現が減少し、NFが減少しその配列も不規則になった。NF-H欠損ではNF-M蛋白が増加し、NFの構築にほとんど影響しなかった。NF-MのC末端除去ではNFの構築に有意な変化がみられなかったが、NF-HのC末端除去ではクロスブリッジが減少しフィラメント間が極めて狭くなった。両C末端同時除去では軸索が有意に細くなりクロスブリッジがみられずフィラメントの配列が極めて不規則になり膜性小器官が蓄積し、軸索輸送障害が起きていることが示唆された。以上のマウスで軸索が細くなったものではミトコンドリアの増加がみられた。以上の解析はNFとミトコンドリアさらに神経疾患との関係に加えて、NF及びクロスブリッジの神経細胞での存在意義を明らかにし、将来ある種の神経疾患に対してNFの遺伝子治療の可能性が期待される。
|