私どもは過去に、パーキンソン痴呆症(PDC)の海馬でghost tangle、すなわち神経原線維変化(NTF)が神経細胞の死によって細胞外に位置するようになったtangleが処理され消失していくことを定量的に確認した。本研究はPDCアルツハィマー病の治療法開発を最終目的として、ghost tangleのヒト脳内における処理清掃機構を、アストロサイト、ミクログリアとの関連から検討した。PDC23例、対照11例を用いて側頭葉CA1を含む海馬領域で免疫組織化学、免疫電顕観察を行った。 通常の電顕観察からは、ghost tangleの多くは細胞外に存在するもののように思われた。一方、免疫電顕観察で、PHFが処理され生じたと考えられるSTとアストロサイトのグリア線維とは、極めて近い位置関係を保って観察されるものも観察された。しかしながら解剖からLRwhite包埋までの経過時間など標本処理上の限界からか、細胞膜(plasma membrane)の保持が完全とは言いがたく、グリア線維と隣接して存在するSTであっても、アストロサイトの細胞内に存在するのかどうか、という断定がむずかしく、事実上それを断定出来なかった。しかしPHFsやSTsがアストロサイトの胞体内ライソゾームに取り込まれている像は観察しなかった。すなわち細胞の外に位置するようになったghost tangleは、あくまで細胞外で処理されるか、あるいは細胞内の細胞質中で処理されるものか、また仮にライソゾームに入れば短時間内でPHF/STの形態とタウの免疫原性を失うもの、と考えられた。 Ghost angleの処理を行う細胞内/外の酵素類を探る目的から共焦点顕微鏡観察したが、検索の範囲で陽性所見を認めることは出来なかった。 一方ghost tangleに対するミクログリアの接触は、アストロサイトに比較すると弱かった。すなわち形態学的所見からは、ghost tangleの処理には、ミクログリアよりアストロサィトが強く参画しているように思われた。
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