研究概要 |
金魚の視神経は哺乳類と異なり再生し、4〜6ヵ月で視覚機能も完全に回復する。この長い再生過程(4〜6ヵ月)で働く分子を同定しその機能を追求することはきわめて重要である。本研究では特に視神経切断後早期に切断端からの再生神経線維の伸長に働く分子の同定を目指した。視神経切断後5日目の網膜からmRNAを抽出しcDNAを合成しcDNAライブラリーを作製した。ディファレンシャルハイブリ法で対照(無処置)と比べて視神経切断5日目に発現が増加(upregulation)するcDNAクローンをスクリーニングした。そのクローンの塩基配列を決定しDNA data baseの検索から、トランスグルタミネース(TG)やNa, K-ATPase α 3サブユニットをコードする遺伝子が捕捉された。ISH法や免疫組織化学法によりTGやNa, K-ATPase α 3の視神経切断後の経時変化を調べた所、網膜神経節細胞にのみ切断早期に発現が上昇し、Na, K-ATPase α 3は10日目、TGは20日でピークとなりその後徐々に対照群のそれに復した。また、成熟金魚の視神経をあらかじめ切っておき(5〜7日前)、網膜片を作製し培養すると神経節細胞から神経突起が伸長(神経再生のin vitro系の確立)する。この培養系にTG抗体やNa, K-ATPase α 3の特異的阻害剤ウアバインを添加すると、神経突起の伸長が完全に抑えられた。このことからTGやNa, K-ATPase α 3は視神経再生初期の再生線維の伸長に重要な役割を果たしていることがわかる。今後この遺伝子クローニング法を駆使して再生各時期に働く遺伝子を見つけたいと思っている。また、遺伝子改変動物を作製し、その遺伝子の機能も明らかにしたい。
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