研究課題/領域番号 |
12680756
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三谷 章 愛媛大学, 医学部, 助教授 (50200043)
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研究分担者 |
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治症患研究所, 教授 (80171750)
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キーワード | グルタミン酸毒性 / 脳虚血 / グルタミン酸トランスポーター / グリア細胞 / 海馬CA1野 / マイクロダイアリシス / GLT-1ノックアウトマウス |
研究概要 |
高濃度のグルタミン酸はニューロンに対して毒性を発揮することが知られている。脳虚血中に細胞外のグルタミン酸が増加する過程にはグルタミン酸トランスポーターの関与が考えられるが、その機構は明らかではない。本研究では、細胞外グルタミン酸濃度調節の機能分子であるグリア細胞グルタミン酸トランスポーター(GLT-1)の欠損したノックアウト(KO)マウスを用いて、虚血中のGLT-1の動態を検索し、虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇におけるグリア細胞グルタミン酸トランスポーターの役割を検討した。 マイクロダイアリシスプローブをGLT-1KOおよび野生型マウスの海馬CA1野に装着し、脳虚血を負荷した。虚血中の細胞外グルタミン酸を透析回収し、酵素的サイクリング法にて測定した。さらに、発生したニューロン死を組織学的に解析した。 虚血開始5分間において、GLT-1KOマウスでは野生型と比べて有意に高いグルタミン酸濃度上昇が観察された。その後虚血時間が延長すると、グルタミン酸濃度上昇はむしろ野生型マウスで顕著となり、虚血開始10分以後では、野生型マウスでのグルタミン酸レベルがGLT-1KOマウスのレベルよりも高くなった。5分間脳虚血負荷により野生型マウスの海馬CA1野にはニューロン死は生じなかったが、GLT-1KOマウスでは遅発性ニューロン死が発生した。20分間脳虚血負荷によりGLT-1KOおよび野生型マウスの海馬CA1野で急性ニューロン死が発生した。 以上の結果から、GLT-1は虚血初期においてはグルタミン酸を細胞内に取り込むように作動しているが、虚血条件が延長するとグルタミン酸を逆輸送し細胞外へ排出していると考えられる。本研究により、虚血脳におけるグリア細胞グルタミン酸トランスポーターは虚血中に機能変化を起こし、ニューロンに対して保護因子としても増悪因子としても作用することが明らかとなった。
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