これまで哺乳類における遊離型アミノ酸は、すべてL-体から構成されていると考えられてきた。しかし最近、哺乳類組織中に遊離型D-セリンやその生合成酵素であるセリンラセマーゼが存在することが明らかになった。我々もL-セリンの腹腔内投与及び脳室内投与によってD-セリン含量が増加することを報告し、L-セリンがD-セリンの前駆物質である可能性を示唆した。 本研究ではD-セリン取り込み部位をクローニングする手始めとして、まずどの臓器にD-セリンが取り込まれやすいのかD-セリン取り込み活性の臓器特異性を検討した。7週令のラットにD-セリン(10mmol/kg)を腹腔内投与し、6時間後断頭してD-セリン及びL-セリン含量を測定した。D-セリンの腹腔内投与によって、胸腺>肺>脾臓>腎臓>肝臓>心臓>精巣>大脳皮質の順でD-セリンが多く取り込まれた。これまで腎臓などの臓器に取り込まれて排泄されると考えられてきたD-セリンが胸腺・肺・脾臓などの臓器に腎臓よりも高濃度に取り込まれることがはじめて明らかとなった。また、胸腺及び肺においては有意なL-セリンの増加が見られたことから、セリンラセマーゼによってD-セリンからL-セリンに変換されたと思われる。 さらに、D-セリントランスポーターの発現クローニングに使用するcDNAライブラリーは大脳皮質、腎臓及び胸腺などの臓器から現在調製中である。
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