マウス個体におけるGABAニューロンの標識法および遺伝子改変マウスを用いたGABAニューロンの形成過程およびその移動パターンについて検討を行った。 (1)GAD65-lacZ融合遺伝子トランスジェニックマウスの作成と解析 9.4kbのプロモーター領域を含むGAD65遺伝子上流域にlacZ遺伝子を連結した融合遺伝子をマウス受精卵に導入することにより4系統の独立したトランスジェニックマウスを作成した。脳における細胞特異的発現について検討した結果、小脳と嗅球ではGAD65の発現様式と一致したが、GAD65の発現している視床や視床下部ではlacZの発現が認められなかった。以上の結果は、GAD65遺伝子上流域は、部のGABAニューロンの標識には適しているが、すべてのGABAニューロンの標識には上流域に加えて他の領域も必要であることが示唆された。 (2)GAD67遺伝子-GFPノックインマウスの作成と解析 遺伝子標的法を用いて、GABAニューロンをgreen fluorescent protein(GFP)遺伝子で標識したマウス(GAD67遺伝子-GFPノックインマウス)を作成した。ノックインマウスについて脳組織標本を作成し、GFPの発現する細胞を検討した結果、GABAニューロンに類似した発現パターンを観察した。さらに、胎児脳標本についてGFPの発現を検討した結果、(1)胎生早期からseptumに多量のGABAニューロンが存在すること、(2)大脳基底核原基から大脳皮質へのGABAニューロンの移動様式はtangenitalの方向が主であるが、radialの方向へ動くニューロンも存在することを観察した。以上の結果は、作成したノックインマウスが脳の各領域のGABAニューロンの形成過程を追跡するのに有力な資材であることを示唆している。
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