近年、膜電位の光学的測定法の導入により脳表面の多領域から膜電位の同時測定が可能になりつつあるが、現在用いられている市販の膜電位の光学的測定装置では、加算処理をせずにシナプス後電位を測定することは極めて困難である。その大きな理由の一つは、生きた"まるごと"の動物の脳表面は、呼吸や循環の影響を受けて微小に動くが、そのな動きが、光学的測定においては大きな光散乱の変化を来たし、アーティファクトとして膜電位変化のシグナルに重畳することである。 本研究は、11年度までに心房内の膜電位測定を目的に心房筋の動きによる成分を減少させる目的で独自に開発した、超高輝度発光ダイオードを光源とした二波長式光学的膜電位測定システムを改造して神経系へ適用し、大脳皮質の膜電位を加算処理することなく同時測定し、機能マップを作製すること目的とするものである。光学的測定装置は独自に開発したもので、超高輝度二色発光ダイオード光源を用いた透過光測定法で、高速の二波長同時測光を可能としたものである。神経系への適用には、時間分解能が十分でなく、まら脳表面の膜電位測定は透過光測定では不可能の為、落射螢光か着色散乱を応用して行う必要がある。初年度の今年度は、光学系を着色散乱測光方式への変更で光源の問題はほぼクリアすることが出来た。しかし、サンプリングの高速化に関しては、当初予想されなかった問題が出現し、ハードの更なる改造が必要なことが判明した。一方、ソフト的にも電気刺激の呼吸・循環との同期、さらに微小な膜電位変化に対応した加算処理等神経系の実験に不十分な点が判明し、その改造も併せて行っている所である。
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